データ分析のための数理モデル入門 本質をとらえた分析のために

データ分析のための数理モデル入門 本質をとらえた分析のために

東京大学先端科学技術研究センター 江崎貴裕

https://www.socym.co.jp/book/1249

データ分析の世界に入門書としては丁寧に書かれている。
いわゆるバラ色の世界や言葉が踊る内容ではなく、データ分析と数理モデルの関係や、実際の適用での意味合いなども含めて現実的なところが、抽象的な概念とどのように関連するかという点が意識されていて、初心者にはありがたい。
データ分析の世界に入る人には、おすすめしたい一冊。


偶然の科学

偶然の科学
著者 ダンカン・ワッツ
翻訳 青木 創
ISBN 9784150504007

https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/90400.html

スモールワールド理論の著者でもある。
常識は常に成り立つわけではなく、予測は必ず外れる。
人が偶然と信じることの構造を知れば、違った形で世界が見えることを説く。


シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」

シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」
ISBN 978-4-8222-4980-9
発行日 2013年12月2日
著者名 ネイト・シルバー 著
発行元 日経BP

シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」
https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/13/P49800/

予測に関する統計学的視点からのいろいろな論述。
堅苦しくなく物語として読めるので、500ページ以上もあるが、読み進みのは速い。

データが増えれば増えるほど予測の精度は上がらずむしろ落ちる。
それはデータにノイズが含まれるからであり、その反対にデータの中から有益な情報を示すものがシグナルという意味で使われている。

客観的な真実がないというのではなく、あると信じて追及していく姿勢がよりよい予測に不可欠なこと、また客観的な真実の理解が我々は不十分であることを認識せよという。この考え方に基づき、精緻なモデルを作って分析・予測するよりは、ラフなモデルを更新しながら予測を見直していくアプローチとして、ベイズ的方法がよいとする。

マグニチュード8クラスの地震は(いつとは言えないがある期間内で)想定外ではなく十分に想定しうることや、あの9.11テロも直前の通信が極端に減ったことから、計画が漏れることを警戒して使わなくなったと想定できたことから、異変は察知できたことなど、の例が挙げられている。


ブラック・スワン(上・下)

ブラック・スワン(黒い白鳥)は日本ではコクチョウといわれて珍しくもないが、オーストラリアで発見された当時は、スワン(白鳥)は白いものと信じられていたことから、驚きをもって捉えられた。議論を、白いカラスがいるかどうかという話に置き換えて考えると、そもそも黒い鳥をカラスと称しているのだから、白いカラスが見つかったとしてもそれはカラスではないというのは詭弁で、生物学的には同じ種に属するもので羽の色が違うだけの白いカラスがいれば驚くだろう。

このような、「ありえないことが起こりうる」たとえとしてブラック・スワンという言葉が用いられ、従来の確率論が適用できない不確実な事象が特に金融分野で起こりうることを議論した書物。リーマンショックなどを経験したいまでは納得が行く話だが、出版当初2007年はその直前であり、あたかもリーマンショックを予測したかのような受け止め方がその後された。