名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必修講義

名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必修講義

https://booklive.jp/product/index/title_id/1104782/vol_no/001

著者は大酒飲みであることは文中の色々なところで伺える。そういう人が書く酒に関する健康本は「酒は百薬の長」という類が多いことは想像されるが、本書は酒に関する俗信や迷信を検証する形で医療専門家に対するインタビュに基づいて記述されており、内容はしっかりとしている。

同じ酒飲みとして率直に言えば、あまり読みたくない内容が多い。一方でこれを自分の健康に対する警鐘と受け止めれば、今後の酒の飲み方も考えていかなければならない。

あれもこれも実践することは難しいので、「飲むときにはしっかりと食べる」ことを宣言しておこう。


地図リテラシー入門

地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる

著者名 羽田康祐
ISBN 978-4-86064-666-0
ページ数 287ページ
サイズ 四六判 並製
価格 定価2,090円 (本体1,900円+税10%)
発売日 2021年08月26日発売

https://www.beret.co.jp/books/detail/806

地図を眺めているといつの間にか数時間が経過するほど地図が好きな自分としては、期待する内容だった。
丸い地球を平面に描くという固有の難題を、どのような方法によって解決しているか、地図がどう作製されているか、比較的技術的な視点で書かれているため、参照文献として使える。

単に機械的に作られているわけではなく目的に応じてデフォルメされたりしているところもあり、現実の世界を利用者にどのように伝えるかという点では「作品としての地図」を意識させられる。

最近のウクライナ情勢を解説するマスコミがメルカトル図法による地図を用いることの問題などが目に見えてくる。


数学にとって証明とはなにか

数学にとって証明とはなにか

数学は数というよりは量や大きさという意味の概念を扱う学問で、証明はなぜそれが意味として成り立っているのかを言葉と記号で説明する。

図形の問題は中学高校で習う内容なので、改めて復習した感覚になり、理解もしやすい。

演繹論理、帰納論理、仮定論理、背理法なども高校生で習う内容だったが、忘れていたので、思い起こすにはちょうどよかった。

最後に出てくるイプシロン-デルタ論法に至ると、何のことやらさっぱりわからない。無限が無限でなぜ悪い。そういうことへのこだわりを捨てない数学者の知的探究心に触れて、自らの無学を自覚するには、いい読みものである。


証明と論理に強くなる

証明と論理に強くなる

小島の数学書はとても分かりやすく解説しようという意欲を感じさせるが、手抜きをしていないので、それなりに理解できてしまうところが却って脳に心地よい疲労感をもたらす。

別に読んだブルーバックス「数学にとって証明とはなにか」に刺激され、本書に至った点では、自分にも少しは勉強しようという意欲があるということか。

本書は数学というよりは論理式を使った証明の方法のこれ以上にない分かりやすく噛み砕いた解説書。

記号としての数字と、数という意味との接点から、演算をどのように説明するかという論理式は、なかなか読ませる。

サブタイトルにある「ゲーデルの門前」は何のことやら。


もうだまされない 新型コロナの大誤解

https://www.gentosha.co.jp/book/b13771.html

コロナについては客観的な分析をきちんと報道しないどころか不安を煽り、エセ専門家たちが便乗して発言するので、何が正しいことなのか分かりにくくなっている。

著者は仙台の感染症(インフルエンザ)の専門医であり、一応は信頼しても良いだろう。

著者のスタンスは、感染症を舐めたら手痛い眼に遭うがかと言って過剰に恐れたり神経質になる必要はないというところにあり、本書ではインフルエンザの経験にこれまでのコロナの知見を加味して、感染リスクを具体的な行動の中からどう抑えればよいかを、素人向けに解説している。

要点は、コロナウィスルの感染は「空気感染」であり接触や飛沫では感染しないというところだ。空気感染とは、エアロゾル(空中に雲のように漂うとても小さな粒子)の状態で文字通り重量で落ちたりしない状態が最も危険という。すなわち、これは風通しの良いところではほぼ感染しないということを意味するため、屋外や換気の良い室内は感染リスクは低いということになる。

これは重要ポイントで、たとえば触ったところを消毒したり手袋をするのは接触感染の予防なので関係ないし、フェイスシールドやアクリル板はエアロゾルを防がないので意味がないことになる。

ラーメン店などは湯気がこもらないようにかなり強い換気をしているためエアロゾルが滞留することはまずないが、カラオケは音がもれないように気密性が高くなっているので空気が籠りやすいなど、具体的なリスクが対策とともに記されている。

信じるか信じないかは読者の判断だろうが、このような知見を専門家は積極的に提示して、公に議論してもらいたい。もちろん反論や反証があるからこそ議論が正当であるとも言えるわけであり、いたずらに保守的になってしまうのは、国民に無理ではなく無駄な負担をかけないためにも必要なことだろう。

前々から飲食店のアルコール提供を禁止することには強い抵抗があるが、ほんらい取り組むべきは、アルコールを飲む人への正しい知識を提供して「静かに飲め」ということだけだ。まして一人酒など歓迎すべきだろう。