予測不能の時代

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予測不能の時代

組織の中での活動が活性化していることを、働く人の身体の微妙な動きをセンサーで感知することで定量的に測定する方法を考案した著者。もともとは物理学(量子論など)を研究している方のようだが、日立の半導体事業売却に伴い職種を転換、IoTセンサデータなどを用いて分析する事業を立ち上げ。

予測不能な時代とは、これまでの経験や成功法則がそのまま通用しない時代。PDCAで言い習わされる管理手法が通用しないのは、それを手際よくこなす前提には変化が少ないことがあるからだ。

不確実性の高い時代には、より高い目的に向かって前向きに取り組む人がたくさんいる組織のほうがうまく行く、またそういう組織はFINEという共通の特徴を持ち、働く人が幸せを感じていることが、センシングから分かってきた。

Flat: 人との繋がりが特定の人に偏らずにバラけている
Improvised: 短時間の会話がいろいろなところで発生している
Non-Verbal: 言葉ではなく動作での相槌などがコミュニケーションで機能している
Equal: 発言権が平等である

「悪い会議」を想像すると、この意味するところは容易に理解できる。

もう一つの議論は、幸せを感じることは一つの能力であり、幸せは与えられるものではないという点である。その能力ある人が「互いに相手のこころの資本を高め合う」ようになるとよい組織が形成される。

そうすると仕事のやり方が、
・目標と現実のギャップを埋めることよりも大義や意義にこだわり手段にこだわらない
・準備を整えてから取り組むよりも、ないないづくしの環境を受け容れて一歩ずつ進む
・目的に向けての合理的説明が可能なときに動くよりも、困難を学びの機会とする
・損失に備えて責任範囲を限定するよりも、新たな人との偶然の出会いを活用し、変化の中にチャンスを見出す
ようになる。著者は効率化を否定しているわけではなく、効率化を求めるほどに幸福化を求めなければ、組織は前向きに取り組む姿勢を失ってしまうと指摘している(p149-151)。

「格差とは量子効果である」という物理学者なりの主張は興味深い。量子の世界では数少ない量子を扱おうとすると、いろいろとイレギュラーな現象が発生するという。量子が集まれば流体になるので量子単位での現象ではなく流体としての現象と捉えられるので、量子効果が消えていく。

これに例えて、処遇における不平等よりも結果としての配分の不平等が大きくなるのは、人という離散的対象(量子)にお金という離散的な移動しかできないものを配分しようとすることにより生ずるばらつきであるというところが骨子だ。

社会の不平等は放置しておくと拡大していくという点についてエントロピー増大の法則に当てはめるのはいささか論理が飛躍している感じが拭えないが、かといって明確に反論するほど読み込んで理解していないので、この点は別の機会に掘り下げてみたい。

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