日本史の誕生

岡田英弘(著)ちくま文庫(2008年)
大陸、半島、日本という地理的関係を踏まえて、日本という国のおこりを、日本書紀の編纂に求めている。歴史を作ることで国家が国家としての独自性を持っていくという考え方で、日本書紀以前には大陸の記録からみた東の小国であった日本が、唐による支配(大陸の脅威)から独立して自国を護持するために、日本書紀を編纂し独自の歴史を持つ国であることを確認しようというところから日本が始まったとする。
邪馬台国は瀬戸内海のどこかにあったとか、推古天皇は女帝であったとするのは中国の史書からは男性としか読み取れないとか、挑戦的な記述が多いだけに、どこまでが学術的研究でどこまでが意見なのかははっきりとはしないが、少なくとも魏志倭人伝から邪馬台国を推定するというつまらない作業よりは、自由な立場での想像を広げて日本史を捉えるには、面白い内容であった。


十八史略1・2・3・4・5

徳間文庫(2007)
1.覇道の原点 丸山 松幸 (翻訳), 西野 広祥 (翻訳), 『中国の思想』刊行委員会 (翻訳)
2.権力の構図 市川 宏 (翻訳), 竹内 良雄 (翻訳), 『中国の思想』刊行委員会 (翻訳)
3.梟雄の系譜  奥平 卓 (翻訳), 和田 武司 (翻訳), 『中国の思想』刊行委員会 (翻訳)
4.帝王の陥穽 中国の思想刊行委員会 (翻訳), 久米 旺生 (翻訳), 丹羽 隼兵
5.完了の論理 中国の思想刊行委員会 (翻訳), 村山 孚 (翻訳), 守屋 洋 (翻訳)
現在、中国と呼ばれている支那地域の正統史とも言うべき歴史書で、文字通り18の史書を概略して一つにしたもの。最古とされる夏王朝から元の滅びるまで(日本の鎌倉幕府が崩壊する時期)を扱っており、それだけでも膨大な歴史を一つにまとめるにはそれなりの苦労があったろう。

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史記(7)思想の命運

司馬遷(著)西野広祥・藤本幸三(訳)徳間書店2006年

列伝の中でも中国の思想家のシリーズ。
勿論、儒教の孔子のページが多いのだが、老荘にもそれなりのページを割いているし、むしろ司馬遷の心は老荘の「無為自然の道」にあったのかも知れない・・・と感じさせる。
特に、巻末の司馬遷から任安への返書はその編題が「生き恥をさらして」となっていることからも分かるが宮刑に処せられた司馬遷の無念さと父の遺言で歴史を残すことによってその精神的苦境を脱しようとする人間らしさがでている。