自衛隊最高幹部が語る台湾有事

https://www.shinchosha.co.jp/book/610951/

台湾有事とは有り体には、中華人民共和国による中華民国への支配につながる一切の行動である。

本書では、自衛隊幹部による図上演習により3つのシナリオに基づいて、台湾有事を想定した議論をしているだけでなく、4つ目のシナリオとして有事をどのように終わらせるかという点をも検討している。

シナリオによれば全面的な軍事侵攻だけではなく、いわゆる超限戦(ハイブリッド戦)を想定し、たとえば漁船団を装った民兵が尖閣諸島に上陸するというような軍の行動とは一見して認められないようなケースや、海底ケーブルの切断による台湾孤立化なども想定に含め、有事vs.平時という日本人が陥りがちな議論を牽制する。

台湾有事の場合の居留民救助も、「国内問題なので手を出すな」という主張を想定したり、米軍が台湾支援に注力するために日本の南西諸島が手薄になる、救済を拒絶する日本人の存在、中には工作員もいるかもしれないなど、具体的に考えるほどに現実味のあるシナリオは、フィクションでありながらもフィクションではない緊張感がある。

対する日本の政策はないに等しい。情緒的平和主義に毒されてしまったかのように見える国で世論を形成していくことの難しさを再認識し、この間も、敵は着実に準備を進めていることを知っておかねばならない。

奇しくもこの本を読み始めたら、中国による台湾攻撃演習が開始された。