犬神家の戸籍
-「血」と「家」の近代日本-
遠藤正敬 著
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3609
あの横溝正史原作、犬神家の一族に出てくる人間関係を戸籍という視点から題材に、戦前戦後に亘る戸籍制度の変遷が犬神家の財産相続に与えた影響を、真面目に論じている。
日本の戸籍制度は「家長」が絶対的な権限を持っていると言われているが、その意味するところは婚外子の扱いや養子縁組の中で明らかにされる。
婿養子という制度が世界的に見て極めて珍しい(儒教の影響があるとはいえ、韓国や中国ではそういった制度はない)ことなど、目から鱗が落ちる話が満載。
それ以上に、この解説を読んだ後に「犬神家」を読むか観るかすれば、また新たな楽しみ方ができるのではないか。なにせ、著者はこの原作をとことん読み込み映画と原作との違いなども随所に触れている。