卑弥呼の時代

https://amzn.to/3goZUxI

吉川弘文館の「読み直す日本史」シリーズ。日本史関連の著作のうち研究成果の高いものが絶版されることを危惧して再版するありがたい企画。本書も初版は95年に新日本出版社から出されたもの。

邪馬台国の時代についての考証。いわゆる九州説、大和説を脱し、東アジアにおける政治情勢や日本列島内部の「倭国大乱」とを絡め、考古学の研究成果の視点を織り交ぜた分析の手法をとる。いまでは当然視される手法だが、当時としては斬新だったのだろう。
「王」という立場にあった卑弥呼は、その後の国家の形ができる前の時代の末期であったというのが著者の視点。


出雲神話論

古事記に描かれている出雲神話は日本書紀においてはかなりの部分が端折られている。
この事実を紐解いていきながら、出雲が古代日本海の交易の拠点の一つであり越の国や筑紫の国と交流しつつ国家としての成立をなす前の一つの自治的な経済圏であったことを議論した内容。
文学者としての立場から古代史や考古学とは少し離れた視点で、ある意味、自由に論じているので学術的にどう評価されているかは不明だが、もともと自由は発想がなければ学問の進歩もないので、これまでの大和中心の日本史観に対してもさらなる出雲研究が期待されるきっかけでもある。