永遠の0

永遠の0 (講談社文庫)
永遠の0 (講談社文庫)

posted with amazlet at 14.05.11
百田 尚樹
講談社

小説にしてはリアルであり、実話にしては美しすぎる。

「娘に会うまでは死ねない」と戦場で敢えて命を惜しんだ零戦のベテランパイロット宮部が特攻で亡くなるまでを、平成時代の孫二人の取材活動を通じて明らかにしていくストーリー展開。

宮部を知るというパイロットたちへのインタビュを通じた操縦や戦闘に関する描写、海軍幹部の無能、戦場の様子などが、今までの小説やドキュメンタリとは違った形で伝わってくる。それ自体、小説として読んでも歴史の一コマとして読んでもワクワクさせられる要素だ。

しかし、宮部というパイロットを通じて描写されているのは、戦場で死んでいった日本人、特に特攻や玉砕という形で亡くなった人たちの心情が形成されていく過程だ。そこに家族や仲間の思いを交錯させ、時代や国家という枠組みの中で生きた人たちの誇りと限界とに大胆に踏み込んだところは、最も泣かせる部分だろう。

8月15日に読んだのは偶然だが、自分が宮部の立場に置かれた時にどう行動するのか考えながら読み進められる点は、感情的感傷的な平和論が横行する中で、筆者の現代人に対する思いを読み取りたい。

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