ネットワークの通信の世界で行われている暗号技術についての解説。
この著者は、JavaやCなどの言語関係の本が色々出されていて、懇切丁寧な説明でわかりやすいので、10年前くらいには結構読んでいた。また「数学ガール」の著者でも知られている。
全体に亘って暗号技術の解説が続くが、いわゆるプログラムの本ではなく、暗号技術の考え方が分かるように段階を追って説明してくれているので、IT知識がなくても読める。
後半になるにつれ内容は難しくなっていくが、読み物として考えれば苦痛ではない。
最も教訓として学ぶべきことは、暗号化については自前の技術ではなくオープンな技術を使うべしという、いささか逆説的な話だった。これは、暗号とは暗号アルゴリズムと鍵という二つの要素で成り立っているという事実を理解し、鍵管理をしっかりとすることで暗号を守ろうという考え方であり、他方、アルゴリズムはオープンなもので多方面から検討が加えられたものを使うほうが結果的に安全であるということらしい。
確かに、自前のアルゴリズムがどんなに複雑でも、それを破ろうとする輩は必ずいるわけで、破られていない実績がある既存技術のほうが未熟な自前技術よりははるかに安全であるということは、他の考え方にも応用できるのではないか。