逆説の日本史 20 幕末年代史編3 西郷隆盛と薩英戦争の謎

2017年5月17日読了

1862年(文久2年)から1864年(元治元年)の3年間を各章立てて扱う。この時代は、薩摩による生麦事件、建設中の英国公使館焼き討ちなどから攘夷の機運が加熱し、ついに薩摩と長州は諸外国を戦火を交えることとなる。いろいろな人物が登場しいろいろなことが起こり、このあと雄藩の同盟が進み幕末を迎えるのだが、第一次四境戦争までが本巻。この3年間において長州藩は政治的にはほぼ死に体となってしまう。

著者によれば、これは長州藩独特の精神主義が招いたもので、山縣有朋の陸軍創設を通じて、太平洋戦争にまで続いている。一方の薩摩は英国に対して「善戦」しつつ攘夷不可能という藩論を形成していく現実主義を貫く。これは海軍に繋がるらしいが、いささかステレオタイプではある。

禁門の変では御所に砲口を向けてしまった長州と官軍たる薩摩とが戦うところからわずか3年の間に、薩摩と長州とが手を結ぶようになるのは、奇跡としか言いようがない。さらに、風前の灯火となった長州が明治以降に藩閥を形成し、しかもこの後、主要な人物は戦死ないしは病死してしまうので、組織とか権力の形成を考える上でも、面白い題材が眠っているのが、これから始まる時代の歴史を知る面白さだ。

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