知的機動力の本質 – アメリカ海兵隊の組織論的研究

知的機動力の本質 - アメリカ海兵隊の組織論的研究
野中 郁次郎
中央公論新社 (2017-05-08)

2017/06/06読了

組織の存在意義に適合させる自己革新能力と臨機応変に「いま・ここ」に対応する機動力のモデルを、米国海兵隊の組織を事例として取り上げている。
海兵隊といえば、陸海空ではない大統領直属の軍隊として存在し常に特殊任務遂行に当たる組織として知られるが、その歴史は必ずしも安泰ではなかった。すなわち、特殊任務がゆえに任務が終われば必ずその必要性が議論され、陸海空とは違い議会で予算を取るにも「常設」の陸海空軍とは違った対応が取られてきたのである。
そのような歴史的背景を抱え、おそらく組織の行動規範として常に自らの役割、来たるべき新しい戦いの形に備えた日常的訓練を通す中で、個としての海兵隊員が最新兵器を使うだけではなく伝統的ライフルマンであり、戦場での死体は必ず回収され(戦後であっても掘り起こされ故郷に戻される)、お互いに大切にされるという感情が醸成されチームワークがベースになっているというのが、興味深いところである。

野中先生の著述は久しぶりに読むが、相変わらずテンポの良い筆致で元気にさせられる。巻末謝辞に、ICSの同級生の名が入っており出版をサポートされたのだろう。彼らの活躍も讃えよう。

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