プロフェッショナルの未来 AI、IoT時代に専門家が生き残る方法

プロフェッショナルの未来 AI、IoT時代に専門家が生き残る方法
リチャード・サスカインド ダニエル・サスカインド
朝日新聞出版

2017年10月29日読了

私達人間は全ての知識を得ることは到底できない。ある知識が必要なときにはその道のプロ(職業専門家)に頼ることになる。

職業専門家は、知識を学び発展させ伝承する役割を果たすとともに、その業務知識のない人々に知識へのアクセスを合理的な価格と方法で提供する。職業専門家の存在する意義はここにある。

しかし、職業専門家は知識を独占することによって一般人からの知識へのアクセスを価格や方法において困難にしており、この状態は解決されるべきであるし、発達してきた情報技術によってそれが可能になっているため、職業専門家の存在する意味や役割は変化するだろうというのが、著者の問題意識である。

これに対する職業専門家の反論は、品質が下がる、知識が伝承されなくなる、機械化できない仕事は必ず残るといった点で共通しているらしい。それらは、既存の職業専門家の業務を前提とした議論であり、業務をタスクに分割することで一部分でも機械化することによって業務自体が変化していくことになるという。これによって職業専門家は変化を強いられる。

特に、人間の思考回路は複雑であり情報技術が発達してもそれを置き換えることは難しいという議論は、アルファ碁がプロ棋士の思考回路を真似するのではなく全く異なるモンテカルロ法という新しいアプローチと膨大な計算機リソースによって問題を解決できることを示してしまったため、必ずしも職業専門家たちの主張は正しくないとする著者には説得力がある。

伝統的方法に固執してテクノロジの進化によってもたらされる可能性を捨て去ることを選ぶなら、後世代に対してそれを説明する責任があるという最後の括りは、職業専門家の倫理として肝に銘ずる必要がある。

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