安政五年の大脱走

安政五年の大脱走 (幻冬舎文庫)
五十嵐 貴久
幻冬舎


安政五年といえば江戸末期、井伊直弼の横暴による安政の大獄のあった頃である。タイトルが目に入りたまたま手に取った文庫である。もともと時代小説というのは、あまり読まない方なので、自分からこういう本を買ったのは心境の変化なのか。
この物語は、井伊直弼がかつて惚れた女にそっくりの美雪姫(南津和野藩:長州藩のシンパ)を側室にしようとあれこれと手を尽くすが色よい返事がもらえないため、南津和野藩に謀反の嫌疑をかけ、美雪姫とともに、走水の絖神岳という難所にある荒れ寺に南津和野藩家老藩士とともに幽閉してしまう。
南津和野藩士たちは、何とか逃げ出そうと思案するが難所である上に厳しい監視のもと、対応に苦慮。
しかし、一緒に拉致された「藤原屋」という御用商人のアイデアで、床下に穴を掘って逃げ道を作り美雪姫とともに脱走しようと諮る。話の半分はこの穴掘り作業の部分だが、後半に入りこの穴が完成したときに見つかってしまう。
しかし最後にどんでん返しで美雪姫は単独脱走に成功し、それを探す監視兵もいなくなったため、南津和野藩氏も無事に逃げだせる。
人間は力では靡かない、最後は心を持ってしなければ人は動かないことを、井伊直弼と美雪姫を通じて表現しようとしている。
ワクワクしながら一気に読めておもしろい。

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