医師の不足と過剰: 医療格差を医師の数から考える


2018年11月24日読了

医者は不足しているのかそれとも余っているのか、それぞれの立場から色々な説が飛び交っているが、自らが医師でもある著者によればそれを研究した書物は殆どないらしい。

終戦直後、人口10万人あたり100人を養成するという政策が掲げられて、それを目標に一県一医大を設立してきて、田中内閣時代に達成した。その後、医学部の数はほとんど変わっていない。

人口減少社会で総数としての医師は余る可能性があるが、一方で高齢化により本来医療を必要とする数は逆に増える。

医師の数を調整するには、必ずしも「市場原理」に任せた方法が旨く行くわけではなく、社会的合意を形成しながら中長期的に決めていく方法を取らざるを得ない。なぜなら、医師を要請するには最低でも10年はかかるため、医学部の定員を動かしたところで、その効果は10年先になって漸く出てくるから。

医師の数を議論する際には、総数としての議論よりも、地域偏在や診療科目の偏在を見て議論すべきである。医局制度がなくなってから、特に地方での医師数の調整が難しくなってきている。

放置すれば、都市部に医師は集中する傾向がある。ビジネスチャンスが多いこともあるが、症例が多くあるため勉強もできて専門医としてやりやすい。

歯科医師は数が増えすぎてしまったが、何らの措置もとられなかった。弁護士は数を増やすべく法曹大学院を設立させたものの逆に直ぐに数あまり状態になって制度自体が崩壊している。会計士の場合、合格者を急増させたが市場が吸収できなかったため、行政側が合格者を減少させる形で、なんとかくぐり抜けた。

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