高坂正堯

2019年2月1日読了

標題にある名前は、京都大学の国際政治学者。そして著者は同じ京都大学法学部で学んだものの、高坂先生とは二度しか会っていない(それも、質問に行った時、本を返しに行った時)という。
ちょうど論壇などで活躍された時代が自分の高校生・大学生の時代と重なっていたので、眼に入った論文は読んでいた。当時から、ぐっと惹かれる「何か」があり、論理よりも感覚で捉える身にとってはあまり学問的にどうこう言えるものでもないが、本書に接してその分けの一端を見た気がする。
父親である高坂正顕が哲学者であり、物事の捉え方考え方に若いときから接していたためであろう。高度な内容を議論しているにもかかわらず文章が洗練され分かりやすいのであった。この点は、ローマ人の物語のなかで塩野七生も書いていた記憶がある。
さらには、「力の体系、価値の体系、利益の体系」という国家観。力を頂点に持ってくる、さらに歴史的に築かれる価値といまないしこれから生まれる利益とを分けて捉えるあたりは、本書を読むまで気が付かなかった。軍事力、歴史的な経緯、経済という言葉に言い換えて捉えれば頷ける。
62歳でこの世を去られたことは惜しむしかないが、学生時代に京都大学に知己を訪ねた際に、せめて自由に出入りできる教室に潜り込んで、寸刻でもその謦咳に触れておけば。
著者はわずか自分とは2歳違いだが、この齢になるとその後の学問の違いがこのような形ででてくるのかということを見せつけられた一冊でもあった。

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