日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略

2019年4月29日読了

金沢駅で待ち時間に眼に入ったので購入。帰りの新幹線で読むはずだったが、加賀鳶を飲んでしまい・・・。
著者はファナックで技術者として勤務し、会社がどうして高利益体質を維持しているのかに関心を持ち、MBAコースに進み経営学者へと道を進んできた。そのため、会社の扱う産業機械(工作機械)の技術動向にはかなり明るく理解も具体的であるためか、工作機械におけるイノベーションが単なるイメージではなく技術的にどのように展開していったのかが見て取れる内容だ。

インテルのMPUはパソコンに使われて急成長してこんにちに至っているが、その前にファナックが工作機械の制御に8086を使ったことがきっかけになっているというのは驚きの事実。さらにはファナックの工作機械は世界のメーカーで圧倒的な力を持っているが、MPUをインテルに、またユーザインタフェース部分を森精機が担うことで、工作機械の本体部分に特化してモジュール化することが、結果的にユーザ満足度を上げ、工作機械産業としてのイノベーションに繋がっている。これは、日本の製造業の本来の強さが、それぞれの組織が強みのあるところを特化して全体として旨く整合しながら総合力を発揮するというところにあるを言うに待たない。

また産業を一つの生態系として捉えた時にどのような役割を自社が果たすのかを真摯に考える企業こそ、新しい製品コンセプトを生み出し新しい生態系をもたらすということも言えるのではないだろうか。イノベーションは起こそうとして起きるものではなく、かといって放っておけば起こるものでもない。常に世の中に向き合いながら工夫を繰り返す人々の存在があり、そういう動きを国全体の風土としていくことが強い国家を作るのではなかろうか。

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