哲学個人授業

哲学個人授業 (ちくま文庫)
鷲田 清一 永江 朗
筑摩書房


鷲田・永江の両人が著名な哲学書をとりあげて、喫茶店などで論じ合うという企画。
取り上げられている書物は、代表的著作ばかりだが、読んだことがあるのはオルテガとか西田くらい。
なので、本当の意味では楽しめなかったが、なんとなくそれぞれの哲学者が何を言わんとしているのかを、二人の学徒が軽い口調で話してくれるので、楽しく読める。
しかし本書でもっとも面白かったのは付録にある「文庫版特別語り下ろし企画」だった。
幸福についてというテーマで議論しているのだが、鷲田は「幸福とは」と尋ねられて「幸福とは何かを言うことを考えなくてよいこと」と喝破する。
若い女性が何か偶然で掴んだときに「ラッキー」というのが侮れないとしている。
全ては末尾の会話にまとめられていた。
永江

 世界を素手でつかんでいるぞという充実感があるときは、幸福とは何かなんて考える余裕もありませんね。

鷲田

考えない。自分がいま何かやっている時に、自分のやっていることの意味なんて考えようともしない。いま自分がこのことをするのに何か意味があるんやろうかとか、自分がここにいることの意味は何だろうかとか、問うのは幸福じゃないときですよ。

私は幸福ではなかったのだ。

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