2019年7月9日読了
神谷書店でたまたま見つけた同著者の「城取りの軍事学」があまりにおもしろかったので、同書で触れられていた杉山城問題について議論した本書を次に読むことにした。
杉山城は埼玉県比企郡にある山城で実際の戦闘の使用形跡はないものの、本格的な戦闘に必要な技術が駆使されたとして、近年注目を浴びるようになった。比企地域は南の北条と北の上杉とがちょうど対峙する場所に当たるため、戦国時代は戦が多い場所だったらしく、山城が至るところに形成されている。
本書は杉山城を中心として、周辺の城を含めた城の縄張り図がたくさん入っていてそれを眺めながら解説を読むだけでも楽しい。正直に言えば、北条が構築した城なのか上杉側の城なのかという問題についての議論は、やや学会の勢力争いのような印象があり、あまりおもしろくないが、その論証として示されている様々な事実関係や推論は、戦国時代への思いを馳せるには十分な内容が含まれている。