なぜ大国は衰退するのか 古代ローマから現代まで

なぜ大国は衰退するのか 古代ローマから現代まで (日経ビジネス人文庫)
グレン・ハバード ティム・ケイン
日本経済新聞出版社

2020年1月19日読了

大上段に振りかぶった表題だが、一国の軍事力の源泉は経済の生産性であり、それは同時代の諸国の間での比較において重要であるという、ポール・ケネディの議論をベースに、経済力のモデルを作って、歴史上の大国の衰亡を叙述する。
著者らの見出した「経済力」モデルは実にシンプルで、

経済力=GDP×生産性×√GDP成長率 生産性は人口あたりのGDP

著者はポール・ケネディの議論に加えて、大国の衰退は結局は経済的現象であり、経済的な衰退は制度の停滞の結果であるという。そしてその原因が政治的制度が現状維持のための不作為へ偏向するところにあると断じている。
文中にやたらレントとかレントシーキングという言葉が出てくるが、これは利権を意味する。レントシークをうばうことを「痛みを伴う」というのであればそれは言葉として間違いであり、むしろ痛くもないはずだ。
最後に米国に対する処方が述べられているが、想像に難くない。憲法の原則に戻り民主主義により政治制度(連邦主義、制限された中央政府、言論集会の自由)を復活させ、予算編成し将来の負担を誠実に計上し、歳出を厳しく見ることに依って問題の先送りをせず厳しい選択をするという、ごく当たり前の結論だったが、大国の衰退の議論の後であるが故に重い。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

CAPTCHA


計算式を埋めてください * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.