みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」
日経コンピュータ 山端 宏実 岡部 一詩 中田 敦 大和田 尚孝 谷島 宣之
日経BP (2020-02-14)

2020年3月14日読了

2011年の東日本大震災のときに振込データが輻輳してシステムが止まってしまったみずほ銀行。そこが漸く2019年にシステムをカットオーバーして、すぐに減損処理。ここに至るストーリーを、第一勧業・富士・興銀の合併あたりから掘り起こして原因を探る内容となっている。

結論は「経営のリーダーシップの欠如」で、正直言ってありきたりで面白くない。どんな会社であっても、システムの開発や導入が上手く行こうが失敗しようがその責任は経営にあることを再確認したに過ぎない。もちろん現場の努力や技量は大いに賞賛されるべきものであるが、それとて経営の責任範疇である。
複数いる著者の略歴をみるとみなシステムの関係者で、技術系と思われた。やはり視点の限界がある。

書かれていないことを読み取ると、みずほ銀行のシステム開発は合併前旧銀行の権力闘争もあったかもしれないが、そもそものところで「なんのためのシステム化なのか」というビジョンを欠いている。言葉を換えれば、顧客のためにどのような銀行を目指しどのようなサービスを提供しなければならないのかという視点が、記述の中にはなかった。つまり元よりないと推量できる。

もう一つの教訓は、これだけ大きなシステムにおける「システム移行」を前提とした開発は、すでに限界が来ているのではないかという点である。つまり、サービスの維持を前提としてシステムだけを右から左に移すという発想は、顧客志向のサービスレベルの向上でもなくまた技術的にも無理があるということになるため、今後は新しいサービスを開発してそちらに顧客を少しずつ誘導して旧システムを除却していくという過程を経るようになるのではと考えされられた。

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