下町ロケット

下町ロケット (小学館文庫)
池井戸 潤
小学館 (2013-12-21)


直木賞、そして「倍返し」のセリフで人気を博した「半沢直樹」の作家だが、詳しいことは何も知らなかった。半沢直樹はテレビすら視なかったので、話題にもついていけない。
かつてロケット打ち上げに失敗した過去を持つ佃社長は、父から譲り受けた下町の部品工場の社長である。技術力には自身を持つが、中小企業で資金繰りが苦しいところに、ロケット打ち上げに必要な基幹部品の特許を大企業よりも一歩先に取得したところから、かつてのロケット打ち上げに夢を持った佃社長の思いが、家族、取引銀行、大企業、かつての仲間、職場などを巻き込んで、展開していく。
リアリティがない話ではないが、自分の周辺で起こっていることとは異なる、しかし、主人公が置かれている立場は自分なりの解釈をすれば自分そのものが今置かれている、あるいは置かれるであろう状況(特に、組織や人のしがらみ、資金繰りという現実など)を想像するに難くない。
この作家の売りはこの一冊だけでは語ることができないことは承知だが、「下町ロケット」を読んで、軽快でテンポの良いストーリー展開と、真面目に生きる普通の人たち、ここぞという時の(言いたくても言えない)「決め台詞」などが、読者の職業人生と折り重なる部分が多いのが人気の原点ではなかろうか。

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