天網恢恢疎にして漏らさず

天のかける網は広く大きく、粗いようだが拾うべきものは拾うということから、悪事を働くといずれ天の咎めを受けるという意味で使われる。
手元の本(奥平・大村「中国の思想 老子・列子」徳間書店)によると、元は老子の言葉で「天網恢恢 疎にして失わず」であり、「天道は自己を主張せずして万物を統括し、命ぜずして万物を適応せしめ、招かずして万物を自ずと帰一せしめ、作為によらずして秩序を形成する。天の網は目は粗いが何一つ取り落としはない。」という意味らしい。
すなわち「なるべくして、なるようになる」ということなのだが、おそらく日本の漢学の歴史の中で「悪事は懲らしめられる」というやや説教じみた解釈がされるようになったものか。
日本では古くから(と思うが)、「お天道様が見ているよ」という躾があったが、最近はおよそ聞かれなくなった。「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」とか「お腹を出していると雷様に臍を取られる」とか、子供にとっては実に分かりやすい言葉で、権威を振りかざすでもなく見えないものに意識を向かわせて自己規律を求める。これらの言葉は日本の文化であったのかもしれないが、もはや死語に近くなってしまった。法とか義務とか難しい言葉でなく子供たちに「悪いこと」を教える言葉は国民的財産なのだが。

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