飛行機事故はなぜなくならないのか


飛行機が旅客機として使われるようになったのは戦後のことであるが、既に千以上の事故が起きている。
一般には飛行機自体が空を飛んでいるときに起こる事故なので、事故の死亡率も高い。また事故は整備不良が原因で発生すると思われている節がある。また事故の規模が死傷者の多寡で語られることも心情的に分からないでもないが、ジャンボ機の墜落は一つのインシデントであって、乗客数の影響は事故とは直接には関係がない。

本書はそういう思い込みを排除し、過去55の飛行機事故の事例を紹介しながら、どのように重大な事故につながっていくことになったのかというプロセスを解説した内容である。したがって、直接的原因だけではなく遠因も含んで事故の全体像が分かるように工夫がされている。また事故の規模は、全損(修理不可能で廃棄されてしまう)か否か(修理して再利用)で区分されて説明され、重大性が必ずしも人的被害と離れて存在することを示してくれている。

本書によれば、飛行機事故の件数自体はあまり減少していない。しかし毎年のように機体と便数が増加している中で、事故の割合は激減しており、技術的な向上の貢献が多大であることを示している。反面、「本当の原因」を分析すると、技術の未熟さではなく人の技術に対する未熟さ、誤作動や、システムが複雑になることによる合成誤謬などの問題が事故につながっているケースが多いようである。

こういった安全性の向上には事故調査委員会による事故発生のプロセス原因の追究姿勢の積み重ねが大いに貢献していることは強調してもされすぎることはないだろう。重大事故を防止するには責任追及よりも前に原因追究という優先順位付けが必要なことへの示唆は、航空安全だけでなく他の重大領域(つまり、生命や経済に致命的な影響を与えるような)において、仕組みとして導入されるべきであろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


計算式を埋めてください * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.