古今亭志ん生(著)ちくま文庫(1991/12)
志ん生のまくら話を寄せ集めたものと思われるが、いわゆる古典落語の話の解説書ではなく、
名人の名人たるゆえんを感じさせる志ん生の苦労貧乏物語。タイトルのなめくじ艦隊も、
関東大震災の後に業平に住んでいたころに家の中をナメクジが連合艦隊のように壁を伝っている様子から来たものらしい。
理屈抜きで「生きていること」を愉しんでいる様子が話の中からじわじわと伝わってくるだけでなく、
落語が単なる話芸ではなく生い立ちを反映した人格そのものになっていることを頷かせる話ばかり。
特に満州での引き上げまでの話は、運命に翻弄されつつも人の恩義を忘れず敗戦でも誇りを持って生きる日本人としての強さ、
清々しさを感じさせる。
最後に記憶しておきたいこととして、次を残しておこう。
人間には自惚れというものがある。自分を人より高く見たいという気持ちがどこかにある。だから人を見て、
・こいつは自分よりできないと思ったら、それは自分がその程度と思え
・こいつは自分と同じくらいできると思ったら、それは自分より上をいっていると思え
・こいつは自分よりできると思ったら、それは自分のかなり上を行っているから追いつくまでに相当かかると思え