ボナンザVS勝負脳–最強将棋ソフトは人間を超えるか

2016年10月8日読了

本書が書かれたのは、当時最強の将棋ソフトと言われたボナンザとプロ棋士渡辺明が対局して、渡辺棋士のほうが勝ったという一つの歴史の直後の2007年である。

まず興味を引くのが、ボナンザの開発者の保木は将棋は強いわけではなく専門は物理化学。チェスのプログラムをヒントに将棋のプログラムを開発し、究極求めているのはプロに勝つことではなく、美しい棋譜を残すことだという。すなわち、ゲームとしての将棋は先手完全勝の理屈があるので、そのアルゴリズムを見出すということなのだ。一方の渡辺明もプロとして自分らしい棋風を活かしながら勝つことを目指している。そこにはやはり美しさを目指すプロの姿がある。
ゆえに本書のタイトル通り、人間対コンピュータととらえるのではなく、一つの解に至る方法論の違いをぶつけ合っているという見方をすべきなのだろう。
実は本書で面白いのは、最終章に保木が書いている、「科学的思考」に関する小論だ。役に立つかどうかわからないものを研究し続けることの必要性、科学的な考え方を学び活用することで騙されないようにすること、「どうしてそうなるのか」を突き詰めて考えることの必要性を説きながら、ボナンザのアルゴリズムがいつかほかの何かに活用される時が来るかもしれないという科学者らしい態度を貫いている。

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