アマテラスの誕生

筑紫申真(著)講談社学術文庫(2002年)
1962年角川書店から出版されたものらしいが、学術文庫として読めることのありがたさ。
著者は高校教師で、文章はですます調で読みやすい。一部論理の難しいところがあるが、読み手の責任だろう。
「アマテラスは蛇だった、しかも男性神である」、という衝撃的記載から始まる本書は、伊勢地方の原始的太陽神であったアマテルが、天武・持統天皇時代に、皇室神としての天照大神になっていくかという過程を紐解いていったものである。


日本書紀や古事記以前の記録には、天照大御神の記録がないことから、「正史」を編纂した天武・持統天皇時代に創出された神である。
神武天皇の東征神話は、天武天皇の壬申の乱を意味し、アマテラスがニニギに対して国を与えるのは、それ自体がアマテラスを女性であり神であるという既定をし、女帝である持統天皇への権威付けと草壁皇子に対する皇位継承を意味づけたものである。
律令が制定され、それまでの最も強いものが国家を制する時代から、制度によって国を治める手段が確立されていく過程において、逆に力以外の権威による皇位確立が必要となり、正史である日本初期は編纂された。
相対的支配者から絶対的な権威となるためには神話(神との繋がり)が必要であり、伊勢の地元神であったアマテルを大和勢力が抱き込む形で、伊勢の地元の伝承と正史としての権威付けを兼ね備える形で、稗田阿礼が口述したものである。
聖徳太子が摂政になった593年から大化の改新645年を経て、律令制定701年、平城京遷都710という歴史的つながりは、7世紀をはさむ日本国家確立の大きな転換点であったはずだ。
そういう意味では、蘇我と皇室との対立関係は、もっと面白い解釈があるかもしれないと思わせる。

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