経済倫理=あなたは、なに主義?

橋本 努 (著)講談社選書メチエ(2008/8/8)
著者は北大で経済倫理について教鞭をとる立場で、本書は経済倫理の入門書として学生向に書かれたものである。
経済倫理とは、経済とイデオロギーの関係を論ずる学問であり様々な学説があるようだが、本書は類型の座標軸を示すことによって、その理解を促すとともに、自分がどの類型に入るのかをあえて判断させて問題意識を持たせようという工夫をしている(さすが、学生向けに書かれただけあり、その辺は実に読みやすい。)。


その内容と自分の立場は以下の通り。
A 利益vs道徳:企業は短期的利益を優先すべきか、(短期的には会社や社員に不利益があっても)道徳的行為を優先するか。
企業は短期的には道徳的に行動すべきで長期的には利益を優先すべきである。したがって、「道徳」に分類される。
B 公正vs安定・成長:公正という道徳理念を原理的に重んじるべきか、秩序の安定・成長という理念に照らして制度条件を調整していくべきか
原理的な公正などありえない(所詮、哲学論争に過ぎない)ので、むしろ秩序としての善を求める。
C 自由な関係性vs人為的リベラル制:どこまで法の介入なしに自由な関係を認めるか。自己責任よりも連帯や忠義の関係を自由に優先して構わないか。
ここはどちらに属するかは難しいところで悩んだところだが、結局は、経済政策である以上は何らかの人為的方法をとるだろうということで、人為的リベラルを選択。
D 包摂主義vs非包摂主義:企業は金儲け第一で行動してもよいか、社会全体の中に倫理の一翼を担う存在として包摂されるべきか。
政府が企業活動にどこまで介入するかという点に関しては、必要最小限に抑えるべきであるとの立場から、非包摂主義。著者も示しているが、包摂主義には限界があるので、結果的な差別と不平等を生み出す。
以上の組合せから16の立場が類型化されることになるが、思想的にポピュラーな8つを示している。
自分の立場は、実は8つのいずれにも属さない立場であり、「いまだ命名されていない」ものの著者は「近代卓越主義」という名前を与えている。現代の支配的イデオロギーの一つとして一貫した思想体系だと持ち上げ、「この立場は、近代の世俗社会を早退として乗り越えることを諦めながらも、人々はみなプライドのある生き方をすべきであり、決して世俗社会に埋もれたり、あるいは包摂されてはならない」・・・・と主張する立場のようだ。
学生が占いをするかのように読める点は著者最大の工夫であるが、それを通じて各説の原書を読むように勧められているのが、いかにも教科書である。というわけで、自分もロールズ「正義論」あたりから読んでみようと思っている。
著者は読者に対して経済倫理に関して自己の立つポイントの一貫性を求めている。本書における著者の問題意識は、次の分に集約されていると思われるので、引用しておく。

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