ビジネス書、経営書である。しかし事例が面白い。
トヨタやホンダが事例に出てくるのはよくあることだが、本書に出てくるのはやや趣を異にする。
一時は廃園の危機に追いやられたが、上野動物園を凌ぐ入園者を擁するようになった旭山動物園。
受験から学問を回復した、京都堀川高等学校。
単なる乗換え場所を買い物場所に変えたJRのエキュート(駅ナカ)プロジェクト。
小学生が霞ヶ浦を救うきっかけになった話し。
知的障碍者が地域社会で活躍する「むそう」。
寒村のおばあさんたちが元気になる「彩り」。
いずれも、組織がどのように問題を捉えて解決に向けていくかというテーマを追いかけているが、読んでいると励まされ時折涙目になってしまうこともある。
著者の野中先生には大学院時代にとても得るところ多く、当時から理論もずいぶんと進歩されているが、基本にあるのは人間に対する非常に真っ正直かつポジティブな感情である。
人間は生まれながらにして善を求めて行動するという信念が文面から感じられ、「見る目」を鍛えること、心の持ち方など、科学的な経営学だけでは説明しきれないことをふんだんに織り込んだ内容になっている。
組織の軋轢に埋もれそうになっている人や、新しいことに取り組んでつぶされそうになっている人に勧めたい本である。
