使える現象学

レスター・エンブリー(著)和田渡・李晟台(訳)ちくま学芸文庫 (2007/4)

Lester Embree, Reflective Analysis,
A First Introduction into Phenomenological Investigation, Morelia
Editorial, 2003の全訳でちくま学芸文庫のために訳されたようだ。
こういう本が単行本ではなくいきなり文庫で出る日本はありがたい国である。

著者のおそらくは大学講義用のノートから生まれたと思われる。

本書の試みは、現象学とは何かとかフッサールは何を考えていたかという、
難しい哲学とは少し距離を置いて、現象学的な思考方法のハウツーを学生に講義するための教科書である。したがって各章の終わりには、ポンチ絵や「問題」が必ず用意されている。日本版の表題が
「使える現象学」とされているのはその意図を表したもので、原題は「思索的分析」である。訳書ではreflectiveを「反省的」
と訳しているため意味が通じにくくなっている。

観察、叙述、反省、意図、評価、信ずること、体験、分析、
吟味という人間の行為を各章ごとに「現象学的」な方法によって、人間がなぜそういう物事の捉え方をするか(つまり価値判断)
ということを説明しようとする。ただしそこに「答え」があるわけではない。それを考える行為が反省でありさらなる洞察を生むとされる。

第七章「吟味すること」の最後の記述が、
そういった考えをもっとも象徴的に表しているので、記録しておこう。

「自分自身の態度であれ、他人の態度であれ、
あるいはさらに集団によって共有された態度であれ、態度を正当化するということは----そして、
正当化された態度に従って行為することは----それ自体として、正当化されるのか否かということである。」

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