人間の建設

人間の建設 (新潮文庫)
人間の建設 (新潮文庫)

posted with amazlet at 14.08.14
小林 秀雄 岡 潔
新潮社


批評家小林秀雄と数学者岡潔の対談(昭和40年、新潮掲載)である。

タイトルにある「人間の建設」とは出版社がつけたものだが、その意味は本文の中に出てくる。

岡は数式ではなく言葉で数学を説明するという。その背景には、何か感覚的なものがポッと湧き出てきて言葉に置き換え思考するという流れで、数学を捉えているかららしい。数式はほとんど使わない(といっても、凡人レベルからみれば嫌というほど使っているのだろうが)。

読み進めるほどに、「人間の感覚」というものを学問においては大事にすべきだという主張が随所に現れている。

アインシュタインの理論物理学に対する批判(あくまでも学問的批判である)においては、

「理論物理学のようなものが実在すると信じさせる最大のものは、原子爆弾とか水素爆弾をつくれたということでしょうが、あれは破壊なんです。ところが、破壊というのは、いろいろな仮説自体がまったく正しくなくても、それに頼ってやったほうが幾分利益があればできるものです。もし建設が一つでもできるというのなら認めてもよいのですが・・・・建設をやって見せてもらえなければ、論より証拠とは言えないのです。」

他にも、両氏の文明、国家、学問、人間になどに対する考え方が、対談の言葉の中に散りばめられており、読むには薄い一冊の文庫本だが、一度で読むにはとても重い内容だ。何度も読み返さねばならない一冊だろう。

なお、先日読んだ、「史上最大の決断」の最後にもこの本が引用されており、二冊を同じ時期に続けて読んだのは偶然ではあるが、何やら因果があるのか。

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