あなたの仕事は「誰を」幸せにするか?—社会を良くする唯一の方法は「ビジネス」である

八王子市にある北原国際病院の理事長による講演などをまとめた書。

北原氏が医師として現代の医療制度に対する違和感から出てくる色々な問題点について議論する。

1.医療は施しではなくビジネスである
2.国民皆保険制度は不平等を招く
3.医療費削減は誤りでむしろ投資を増やすべき(但し、条件付き)
4.医療は輸出できる

などの議論が出てくる。
一つには、我々の医療に対する誤解がたくさんあることに気がつく。例えば国民健康保険料は、受益に応じて負担が増す仕組みではなく所得に応じて負担が増すという税金であり、皆保険の名目下でお金がある人もない人も同じ医療を受けなければならないから、結果的に高度医療が受けられないという不平等が生じているという議論。いわゆる、保険診療、混合診療、自由診療という世界での議論を超えたところで、現行制度が医療の発展を妨げていることを訴える。特に言及はないが、お金がある人が高度な医療を受けられる仕組みを進めていかないと、医療(広い意味での)の質は上がらないという。

北原氏は、医療を「病院」「医者」という狭い世界ではなく、癒やしをもたらす社会そのものが医療であるという考え方を持っている。つまり、農業などを含む社会の仕組みそのものが医療であり、逆に医療の本質はICUと手術室であると言っている。こう考えれば、医療費を増やすという考えは経済成長と類似した考え方になり、例えばインフラへの公共投資が医療関連公共投資に置き換わることもありえるのではないかと考えられる。

医療が輸出できるというのは、そういった社会制度として、医療器具の供給体制とか病院のアメニティを高めるためのホテルとの連携なども踏まえて一つのシステムを海外(特に発展途上国)に作るということを目指しており、今般、カンボジアにそのような構想のもとで病院を設立するプロジェクトが始まったようだ。

おそらく、医療業界では異端児であり医師会からもそっぽを向かれているかもしれない方だが、還暦を過ぎてなお自分の違和感を根拠にして日和らずに自説を展開して病院を設立し、実践していくという姿勢には、専門家として共感を覚え学ぶべきところがある。

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