「いき」の構造

「いき」の構造 (講談社学術文庫)
九鬼 周造 藤田 正勝
講談社
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江戸っ子がよく使う「粋だねぇ!」という言葉があるがこの「いき」とはいったいどのような概念なのかを紐解こうとする。帯によれば「日本文化を読み解く独創的哲学」ということのようだ。
おそらく本書の特徴は「いき」をひとつの現象として捉え、その構造を明らかにして民族的特殊性を持った意味であること、つまり他の言語では代替する言葉がないことを説明しようとしている点だろう。
まず「いき」の内包的構造として心の中でどういうとき状況において「いき」と感ずるかを論ず。次に外延的構造として「いき」と関係する「上品」「派手」など他の事物を明らかにする。そういった意識現象を客観的状況と関係させて「いき」の自然的表現や芸術的表現を明らかにしていく。
最後には、運命によって諦めを得た「媚態」が「意気地」の自由に生きるのが「いき」であり、民族存在の自己開示として把握されたときに、十全なる会得と理解とを得たと結ぶ。
序が昭和5年に書かれていることから、時代背景が今とは全く異なることがわかるが、そのため内容にはそもそも理解できないことも多くあった。しかし藤田正勝による詳細な注釈に助けられ読むことができる。
つまるところ現代社会においては「いき」であることがもとめられておらず、そういった態度も失われ、時代劇や小説の中に言葉だけが残されたのだとすれば、一抹の寂しさを覚える。

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