やさしさの精神病理

大平健(著)岩波新書(2006年6月32刷)

刷数からして学校の読本として使われているのかもしれない。対象年齢も20歳前後と推定される。

著者は、他者の立場を慮って考える旧来の「やさしさ」と、他者を傷つけないことで自分を傷つけない現代の”やさしさ”との違いから、その根っこにある「自分探し」をする若者の思考様式を説明する。

但し、どうすれば自分探しができるかということについては触れられていない。

最後は、自分ばかりに注目しすぎても答えは見出せないよということを「スルタンと魔神」やイソップの「ろば」の寓話を交えて説明している。結局は(他者との接触あるいは衝突をしてお互いを)傷つけることを恐れていては、「自分」なんて見つからないよと諭そうとしているのか。

余談だが、どうして若者の「自分探し」は海外旅行なのだろうか。非日常の旅から見つかるものだと仮定をおいている自分に気がついたり、探している主体である自分の存在を忘れて、自分の外に答えを求めても、何も見つからないと思うのだが・・・。

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