史上最大の決断


ノルマンディ上陸作戦。
第二次世界大戦でのドイツ敗北を決定づけた連合国による一大作戦であり、後に米国大統領となるアイゼンハワー将軍の名を轟かせた戦いである。

・・・程度の知識しかなかったのだが、このたび野中先生がリーダーシップをテーマとして本書を上梓されたのであらためて読んでみた。

本書にはノルマンディ上陸作戦に関わる人物がたくさん登場する。単なる戦いの解説ではなく、作戦が置かれている国際情勢を加味した記述になっているため、登場人物はアイゼンハワーだけではなく、チャーチル、ヒトラー、ルーズヴェルトを含む。

「賢慮」「フロネシス」という言葉に表されるリーダーシップという観点から、彼らを含む人物がどのような生い立ちを経て、どのような状況に置かれ、どのような判断をしてその後の歴史に名を残したかという形で、記述が進む。

戦闘の描写は地名が多く出てくるため、頭の中で図面を描くことが難しかったが、リーダーシップを論ずるに当たっては、人物の生い立ちだけではなく、時代の状況を明らかにしなければ、なぜそのリーダーがリーダーとなり得たかが上手く表せないことを、本書は物語っている。

さらに難しいのは、それを汎化してどのようにリーダーを育成するかという話となると、実は時代を先読みしなければならないということもわかってくる。

アイゼンハワーも陸軍士官学校を出て入隊し、幾年かを経て戦場を経験することなく一旦は退役していた。

つまり、時代に応じた人物を第三者的に作ろうということは必要性はあっても視点としてはやや的外れで、むしろ、リーダーを必要とする際にその資質ある人をどう見極めるかとか、将来を担いそうな人に将来の混沌とした状況において活躍できるよう、いかなる経験を積ませていくかということについて、社会的なコンセンサスを作っていく必要性を思わせた。著者の意図からは外れているのだろうが、野中先生にお目にかかる事があれば、ぜひ議論してみたい。

2 thoughts on “史上最大の決断


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