ハイデガー入門

竹田青嗣(著)講談社選書メチエ(2005年)
前半がハイデガーの「存在と時間」をわかりやすく(といってもやはり分かり難いが)解説。
後半は、「後期ハイデガー」についての論評である。


ハイデガーは現象学のエドムント・フッサールの弟子であり、その思想はフッサール現象学の影響を強く受けているとされるが、著者は現象学の研究においては第一人者であり、「存在と時間」の解説においても現象学の影響を踏まえて行われている。
「存在とは」という問いかけに対する解釈として、「なぜ存在しているか」という原因を求める問いかけと、「なんのために存在しているか」という意味を求める問いかけとがある。前者の問いかけは、必然的に「神」のようなものがそこに生まれてくる。後者は、他者との関係性という観点を生み出す。
人間における「ほんとう」とか「よい」といった意味の本質を探究すると、それは他者と共有できる可能性として「ほんとう」とか「よい」を捉えている。つまりそれが世の中にとって良いことなのかどうかということではなく、他者とのかかわりにおいて人は存在しているという考え方を解説している。
「公共性としての「本当」や「よい」ではなく、各人が自身の問題として抱えるものとしての「ほんとう」や「よい」の本質を捉えること、個々の実存の「固有性」や「絶対性」という場面から、「他者」との関係原理の哲学としてそれを導くことが重要」(p159)というあたりにその考え方が凝縮されている。

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