失敗のメカニズム―忘れ物から巨大事故まで


交通事故や作業現場での災害など痛ましい事故が発生したとき、その原因を「人のせい」にしてしまうことがよくある。しかし人は完全でない以上、不注意などは起こることを前提に様々な対策を採ることが必要であり、最終的に大きな事故や痛ましい事故に繋がらないようにする。本書はタイトル通り事故がなぜ起こるのかを構造的に捉えることに力点をおいて説明している。
著者によればヒューマンエラーにもいろいろな定義があり、「意図に反する結果を生んだ活動」という定義も意図自体が人によって捉え方が違うとか。当人には成功でも他人には失敗ということもあるのは会社ではよく見る光景だ。
別の捉え方として、機械などのシステムの働きに対して人の行動が有害な結果をもたらす場合にヒューマンエラーとする考え方もあるようだ。
著者が言う、ヒューマンエラーを中心に据えてそれを発生させる因子を除去することだけでなく、発生した際の軽減策も考えておくべきと。ヒューマンファクター以外に組織ファクターの重要性を説き、特に、エラーを隠すのではなく公開して対応をとる仕組みの方が重要であり、それができる組織風土を作ることが事故防止には肝要であるという点には、全く同意せざるを得ない。
しかしエラーを隠蔽する風土があること自体が既にエラー対応を送らせる原因になっていることがわかっているときに、どうするのかは書かれていない。風も土も自然に「そこにある」ものであり当たり前と思っている人には、研修などによる啓蒙や外部からの圧力によるしかないのだろうか。

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