遺伝子を味方にする生き方

遺伝子を味方にする生き方
宗像 恒次
きこ書房


何やら怪しげな宗教書のように見えるが、れっきとした行動科学の書物である。但し一般にも読みやすいようにこういうタイトルになっている。
特に、うつ病を発症したり癌・糖尿病などの生活習慣病の元になっている人間の行動性向を病気の原因と捉えて、どのように解決していくかという方法論が注目される。
著者によれば、人は起こった事実よりもそれをどう感じてどう受け止めたかというイメージに動機付けられて行動する。つまり客観的事実がどうかということよりも受け止めたイメージを変えてしまえば行動も変えることができるという。通常は否定的な自己イメージの存在に気がつき、それを自覚して変えたいという意思につなげ、さらに肯定的な自己イメージに書き換えるという方法が有効で、それをひとつの形にしたもの、SATというものらしい。
その中心に来るのがアサーション法。沈黙や受身でもなく攻撃的な方法でもなく、「わたしはこうしたい」という上手な自己主張。これには率直さ、誠実さ、粘り強さが必要だが、簡単ではないという。「あなたは」ではなく「わたしは」という主語を使うことがポイントである。
本書を読んで自分についてのひとつの大きな気づきは、自分が抑うつ状態になっているときには、「自分はこうしたい」ということを言い出さないまま自分の頭の中で抱えているときであること。通常の生活ではないのだが、こと仕事となるとついつい抱えてしまう癖があり、それをやめて、とりあえず近くの誰かに「持ちかける」ことを、行動の基本としたい。
また、著者は人間の記憶は自身の体験だけではなく、遺伝子を通じても伝えられているというが、どこまで信じるかは別として、少なくとも親が体験したことは育児などを通じて伝えられているということは言えるだろう。そうすると、親またその親の人生経験は、自分の行動を規定していることになるため、親そして先祖の歴史を理解することは、自分の行動を理解する上でもとても大事なことである。そのように考えると、自分として知らなければならないことがあることに気がつき、親族に親の昔話を聞いてみたいと思うようになった。

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