スミダ式国際経営

スミダ式国際経営―グローバル・マネジメントの先進事例
桐山 秀樹
幻冬舎メディアコンサルティング


スミダコーポレーションは色々な機械部品に使われるコイルを製造販売するグローバル企業である。
もともとは下町の墨田区が工場発祥の地であることから社名が今でもそうなっているが、世界各地に拠点を有する会社に成長した。
CEOである八幡滋行氏は香港に活動拠点を置き、社内公用語は英語、日本の伝統である退職金制度は廃止、幹部は高い現地採用比率、早くから委員会設置会社になるなどなど特色のある経営は、ハーバードビジネススクールのケーススタディにもなっているという。
読後に残る印象は「経営者の普遍的価値観の追求」ということだろう。本書のサブタイトルに「グローバルマネジメントの先進事例」とあるが、本書の中では「グローバルという意味はよく分からない。むしろトランスナショナルだ。」という趣旨の言葉があった。海外進出する企業にも色々なパターンがあるが、一般には現地企業として如何に現地に溶け込めるかが成功の重要なファクターになる。英語が公用語、グローバル採用などのスミダの特徴は、そういった現地化を推し進めることになっているが、他方で、経営が普遍性を求めているところが特徴なのではないか。
日本は製造業が支えているということはよく言われるが、それは「ものづくり」という大和言葉で表現されるように、些か情緒的になる嫌いがあろう。日本の雇用は日本で製造作業に携わっている業種が支えているというのならまだ分かるが、いまや製造業は海外での活躍のほうが目覚しく、国内には工場すら持たない製造業もあるくらいだ。
コイルという極めて素朴な部品を製造する会社が世界展開するに当たって、経営者の考えがいかに大きく影響しているかを感じ取れる一冊であった。

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