完全解読 フッサール『現象学の理念』


完全解読というタイトルは著者の意図とは別に読者の理解力が出てしまう部分なので、私の場合は必ずしも当てはまらないが、現象学におけるもっとも基本的な論点である「認識」の問題についての解釈である。
デカルトの方法的懐疑が要素還元的な科学の方法論を支持しつつも、科学の方法論で行き着くところの「客観的な事実」とはなぜ客観的と認識できるのかを説明しきれぬまま、「われ思う故に我あり」という逃げを打っているところに対する、批判的考察から現象学は始まる(と私は思っている)。
哲学の面白さは、読んでいてなんとなく分からないことを自分の言葉で説明しようとすると、まったく何も分かっていないことに気がつかされることなのだが、本書も実に分かりやすく「現象学の理念」を解説してくれているので、入門書としては最適だが、さて何が書かれているかを要約出来ないところが、現象学の魅力でもある。
現象学は大学院で野中先生が教材として使われたことがきっかけで読むようになった。ビジネススクールに行って何を学んだかと聞かれると、必ず「現象学」と答えるようにしているが、ほとんどの人は「何それ」と尋ねる。かくいう自分も哲学など無縁だった。野中先生の教材は英語でしかも一晩で読まねばならない。安易に日本語本を求めて手にしたのが竹田現象学だった。
しかし、きっかけはさておき「この人はなぜ自分の話が分からないのだろう」という疑問が認識と係るという思いは以前からあったので、最初に竹田現象学に触れたことが後々の対話における物事の捉え方を考えながら人と話す姿勢に大きな影響を与えているような気がしてならない。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

CAPTCHA


計算式を埋めてください * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.