「社会的うつ病」の治し方


著者の専門領域は「ひきこもり」なので、うつ病は専門領域ではないと書かれている。
素人からすれば、同じ精神科の領域なのではないかと考えてしまうが、そうではないらしい。
しかし、ひきこもりの治療で用いられる対人関係の改善の考え方(ここでは、「人薬」という言葉が使われている)が鬱病の治療にも有効なのではないかという仮説を提言しているのが、本書である。
特に鬱病の中でも、新型うつと呼ばれる、双極性障害に有効らしい。つまり、趣味などの楽しいことは元気に取り組めるが、仕事など責任あることになると急に気分が悪くなってしまうという症状に有効という。
素人なりに考えれば、確かにそうだと思われる部分もある。なぜなら、例えば風邪を引けば、趣味の最中でも職場での仕事でも風邪である。つまり病気はどこにいても病気なのだ。鬱病という病気は最近開発された薬がかなり有効との宣伝があるが、新型うつのような場所に応じて症状が変わるという病気に、本当に薬が治療手段として最善(有効であったとしても)なのかいう疑問がある。
著者は、家族や職場、あるいは地域との関わりなど、人間関係の改善をすることで、鬱病とされている病気の症状が改善するケースがあるという。
医者は病気を診るのではなく人を観るのだという著者は、最近の医療が科学一辺倒になって、機械や薬を用いるのが医療であるかのような誤解を生んでいることに対する警鐘でもある。対人関係の改善など言ってしまえば、医者の仕事ではない。それを敢えて主張しているところに、医師である著者の勇気が見える。

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