菊と刀 日本文化の型

ルース・ベネディクト著・長谷川松治訳(2005年)講談社学術文庫

原著は終戦直後に発刊された英語のThe Crysanthemum and the sword by Ruth Benedictである。

実は読書の形態として、ポケットに入れて通勤電車で読む文庫/新書、寝床で読むハードカバー、職場で読む実務書、雑誌というパターンがあるが、本書はもう一回きちんと読みたいと思わせる。

西洋を「罪の文化」日本を「恥の文化」として解説した本として引用されていることが多いが、我々が何気なく使っている「義理」と「義務」の違いや、「世間」という概念を、研究者として冷静に書いているところが驚嘆する。

よく、「あたりまえを疑え」ということがあるが、疑えるものだったら当たり前ではない。通常であれば、当たり前のことには気が付かないから「あたりまえ」と思うのである。どんな人でも自分を別の眼で見るためには第三者の存在が必要であるのだ、それは国家のレベルにおいてもどうようなのである。

「菊と刀」はある年代以上の人なら大抵は知っている本らしいが、これを有名にしたのはおそらくその内容ばかりではなく、徹底した翻訳にある。原文をただ単に日本語にした類の書物が多い中、著者が日本の何を説明しようとしているかというところまで踏み込んで原典にまであたって翻訳がなされていることは、訳者の熱意を感じる。惜しむらくは第13章「降伏後の日本人」だけが、翻訳の質が落ちており日本語の文体が明らかにそれまでの章とはことなっている。

文庫なのに1250円はさすが学術文庫だが、上京したときに書店で「学術文庫」なるものを発見したときは、田舎ものゆえ上京したメリットを感じたものだ。

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