牧野二郎(著)岩波書店(2006年7月第一刷)
著者は弁護士。
キーメッセージは、内部統制とは米国のようにトップダウンで経営者が構築すべきものではなく、組織の構成員が主体的に取り組むべきものである、とする。
タイトルから「日本型」についてどのように考えるのか大変期待して読み進め、概ねの考え方には同意できるが、以下の点については反論ないし同意しかねる部分があった。
1.著者は米国型が悪いということを理由に「日本オリジナル」を推奨しているが、社会環境に適する限り米国型でも日本型でも、どちらもかまわないはず。このへんやや記述に焦りがある。
2.内部統制は組織の構成員が携わって自ら構築するものという点には賛成するが、それすなわちトップダウンがダメということではない。あたかもトップダウンアプローチが経営者が社内警察組織を作るような記載をしているが、これは内部統制の捉えかたが異なっているからである。つまり企業の社会性を踏まえれば、経営者も社員も関係なくその場面に応じた内部統制の構築と運用は必要、しかし、いざ不祥事があった際の責任は誰が取るのか、そして責任の逃れされないためにはどうするのかというのが、会社法などの制度の趣旨である。したがって、法律的な責任論と実際の進め方の問題を混同して捉えている嫌いがある。
3.内部統制の限界に触れていない点は、画竜点睛を欠く。仮に組織構成員が主体的に取り組むべきものとしたときに、それが旨く機能していない場合には、いったいどうやってカバーするのか。つまり外部統制たるコーポレートガバナンスの適切な運用と絡めて相対的に内部統制が機能している点をもっと強調してとらえるべきであろう。