哲学の使い方

哲学の使い方 (岩波新書)
鷲田 清一
岩波書店

鷲田先生の書はおそらく現象学関係の本を読み漁っていた時期に巡りあったと記憶する。

現代社会は複雑になりすぎて各領域での専門化によって「知の細分化」が進んでいる。そのような社会では哲学は、垣根を乗り越えて「全てに気を配る」姿勢を持つことが大切であると説く。
専門分野以外の領域を「専門分野ではありませんので」といって逃げるのは、一方では、自分の領域には踏み込むなという不遜な考えが込められている。
専門家にとって必要なことは専門分野であることは言うまでもなく、同時に幅広い教養を持つことであり、教養とはものごとを色々な角度から眺めることが出来る力であるという。
哲学は「問を問い続ける」形で「実践」されるものであり、「臨床哲学」という言葉で表現される方法論を実践する「哲学カフェ」の意義を説く著者は、他方で日本の哲学は哲学を学ぶことを目的とする「哲学学」になってしまったと嘆く。

味わえる一冊である。

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