CSRの本質 企業と市場・社会

十川廣國(著)中央経済社(2005年)

CSRの問題について、経済学的観点から企業経営者のエージェントとしての役割に着目しながら議論を進めている。
従来の経済理論の発展系として経営者を捉えれば、経営者とは所有者である株主のエージェントであり、
株主の利益最大化という制約曲線の下において自己の利益を最大化するものとして定義される。

しかしながら、現代の企業は「各種ステークホルダーとの良好な相互依存関係を保持することによって維持されるゴーイング・
コンサーンとしての性格を持つ」ため、「多様なステークホルダーの利害の調整を図ることが求められ」ることから、ステークホルダーの
「協力関係を確保するために社会的目的を考慮して企業が行動しなければならない」(p188)と主張する。
著者はこの行為をCSRと定義している。

一方で、このような協力関係を確保するという考え方に立てば、倫理的道徳的な問題としてのみ論ずるべきではなく、
CSRを企業の存立基盤たる経営基盤を形成する重要な要因と考えるべきであるという。したがって、
全ての社会問題がCSRとして考えられるべきではなく、むしろ社会福祉増進のための企業の役割としてはおのずと制約があると主張している。
これはファッションとしてのCSRに対する警鐘でもあろう。

そして、企業が担うべき責任の範囲を以下のようにブラック・グレー・ホワイトの三層構造(色に意味はない)で説明する。

ブラック:法令その他規制を遵守すること。当然のことであり、この領域を超えたところで企業が担うべき責任が始まる。

グレー:社会の期待と企業行動のギャップが大きいところで法律化はされていない(が強い社会の合意がある)。

ホワイト:社会が期待する領域であっても、合意形成はそれほど強くない。
要求を先取りして責任ある行動をとるかどうかの判断を求められている部分。
もう一つの命題である企業音経済的効率実現の問題との両立が課題となる。経済的実体としての企業の維持発展に支障があるかもしれない。

最終的には、社会的評価であるGoodwillを獲得することが目的であるという。

 

 

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