稼ぐまちが地方を変える―誰も言わなかった10の鉄則

著者は高校生の頃から地元早稲田の商店会の活性化に関わってきており、数々の挫折を経験して、それを財産として現在の地方都市の商店会などの再生プロジェクトに関わるようになって来た。本書はそういった経験から得られた10の教訓を「まちを変える10の覚悟」としてまとめたものだ。

ふるさとの宇部市は中心部に、三炭街、銀天街、新天町という商店街が3つ連なったアーケードがあり、子供の頃は買い物といえばこの商店街に行くのが楽しみだったが、いまや「日本一のシャッター街」と揶揄されるまでになっている。「郊外型店舗に押されて」というフレーズがあるが、それだけが原因とは思えない。むしろ郊外型店舗は都市資本を中心としたどこにでもある無個性な店舗が多く、本当に地元の人を満足させているわけではない。車社会であるがゆえに、日常的買い物以外は、わざわざ九州にまで車を走らせるという話も聴いている。

そういった問題意識の基に本書から得られるいくつかのポイントがある。

最も傾聴しなければならないのは、まちづくりは行政の仕事ではなくそこに不動産を所有する人のビジネスであり、その人たちが本気になってビジネスをして不動産の収益性を上げる努力をすべきという点だろう。

ゆえに、何かの物件を作ってそこに誘致するのではなく「先回り営業」でテナントを先にプランとして決めた上で、その収益性の枠内で投資額などを決めていくという。またテナントにはナショナルブランドの店舗ではなくなるべく地元の店を入れること、そうしなければ稼ぎが本社に吸い上げられてしまい地元の再投資に回らないからだ。

行政側は国からの助成金をいかに得るか、あるいは活性化策が補助金の支給条件に該当するかという観点で発想するので、企画側も補助金をもらうことが優先してしまい街づくり本来の目的が喪失されてしまう。さらに言えば、補助金がもらえなければ何もできず街づくりとは逆になってしまうことも。

その他、10の鉄則の中には、小さくはじめよ(鉄則1)、専従者を雇うな(鉄則9)、血判状を取り交わせるパートナを見つけよ(鉄則3)、全員の合意を目指すな(鉄則4)、利益率にこだわり(鉄則6)、分配の約束事も事前に明確にしろ(鉄則10)、撤退ラインを決めておけ(鉄則8)など、スタートアップビジネスに必要なことが、そのまま地方のまちづくりでも必要なことを主張している。

これらが経験から醸し出された教訓であるところが実践的であるが、従来の行政と住民という考え方ではなく、本来の地方自治を考えた場合の住人たちの思考のあり方などにも示唆するところが多くある。

2015年7月18日読了

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