吉田松陰 一日一言

川口雅昭(編)致知出版社(2006年)
吉田松陰一日一言―魂を鼓舞する感奮語録


編者は自分が通っていた高校の先生であった。習ったことはないが、剣道部の顧問で厳しい指導をされていたことは覚えている。
萩に送還され野山獄から始めた孟子の講義記録であり最も体系的に松陰の思想をあらわしている講孟剳記、また伝馬町牢獄で処刑される直前に著された士規七則と幽囚録、さらには子弟に宛てた手紙からの言葉が多い。
松陰思想の読み方は、過去の歴史の中でいろいろと「利用」されてきているが、文章を読めば読むほど、私には次のように読める。
「自分は殿様、家族、恩師、友人などいろいろな人に囲まれて恩を受けて生きて来ている。また日本という国に生まれ、その歴史を育むことができることを誇りに思っている。この方々の恩に報いるため、また国を発展させるために、自分は一体何をしてきただろうか。何もできていないではないか。自分に誠が足りないからだ。嗚呼、もっと学んで世の役に立つ人間にならねばねばならない。」
30歳直前に刑死しているだけに佐藤一斎のような老成した考えではない。むしろ人間の善意を前向きに捉えてひたすら信じようとしている思考は、文章に触れる人の心を明るく暖かくする。

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