タテ社会の力学


社会学というのはこういうものなのだろうか。
社会科学という見地からすると、およそ科学的とは言えない内容だが、それなりには面白く読めた。
タテ社会という言葉はよくつかわれるが、組織の上下関係とか閉鎖的というイメージで使われているが、著者の使い方は全く異なっている。この点、タテ社会という言葉を広めたと(自負する)著者としては困惑しているようだが。
日本の組織構造の特徴として、一般に個人は家族などの小集団に帰属し、その小集団の長が別の集団に帰属するという形で大組織が形成されるという「観察」に基づき、この構造を「タテ社会」と称している。
こういった組織では、全体としてのルールに従うかどうかよりも、他の人がやっているかどうか、あるいは小集団から排除(村八分)されないかどうかというところが、行動の判断基準になるため、外から見ると理解しにくい、閉鎖的と観られることになるという。
「場」を共有する小集団という考え方など頷ける部分もあるが、そういった観察を持って「日本の社会は・・・」と論ずるのはいささか行きすぎと受け止めたが、著述されたのは1970年代後半であり、欧米などから日本的経営などが賛美され始めた頃という時代背景もあろう。
おそらく著者の論考は学会などでも批判されたと思われる。「付記」には次のような言い訳がある。
「定着度の高い特定の人間関係、集団の孤立性、上司と部下、同僚との関係、夫婦、親子など家族成員の関係を他の諸社会との比較を念頭においてとらえ、日本のさまざまな諸現象を説明できる論理を見出そうとした・・・・」(p164)
それはそれでいいとして、比較するならきちんとタテ社会でない他の社会も(多少の記述もあるが)論じて欲しかった。

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