モールス電信士のアメリカ史


久しぶりの読書をした。ずっと仕事で頭が一杯で本を読もうという意欲がなくなっていた。これは知的好奇心が蝕まれている極めて病的な状態で、私にとってはストレス指標でもある。本書を読み始めたのも7月中旬であり、ようやくここにきて読み終えた次第。
さて、トンツーの符号で文字をやり取りするモールス信号は、衛星通信技術などの発達によって、現在は、アマチュア無線の世界でしか使われていない。
しかし、よくよく考えてみると短音と長音の組み合わせで文字を表現するという方法は、デジタル通信の走りとも言えるのではないか。本書の副題である「IT時代を拓いた技術者たち」がそれを表現している。
本書は、そのモールス通信の歴史についてそれを担ったアメリカの通信士を通じて語ってくれる。
モールス符号はモールス氏が開発したものと考えていたが、これは誤りであった。通信方法を考えたのはモールスだが、符号を考案したのはヴェイル氏だったようだ。ヴェイルは、活字の磨り減り方を見て、最も使われる活字が最も磨り減っているという前提の下に、使用頻度の高い文字には簡単な符号を割り当てている。
・E
・・I
・・・S
・・・・H
・-A
ヴェイルはモールスとの契約によって、特許収益の四分の一を受け取る代わりに、発明・特許をモールスの名義とすることに同意する。実に面白い歴史がある。
電信は南北戦争でも活用されこれが普及のきっかけとなった。新しい技術は戦争で発展するという法則がここにも当てはまる。
リンカーンは通信室に頻繁に出入りしていたらしく、情報鮮度というものに対して気を配っていたことが分かる。
エジソンも実は通信士であったようだ。通信士の仕事は文字が分かることが前提でそれなりの学がないと、通信エラーの補正などもできないため、今で言うホワイトカラーの仕事だった。ゆえかもしれないが、ネットワークが発達し大規模化していくにつれ、組織的に運営されるようになっていき、通信士も職人から勤務労働者へと変化していく記述がある。

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