情報とインセンティブの経済学

2020年9月20日読了

情報の非対称性を取扱う。
ミクロ経済学の考え方には情報の完全性という前提が置かれており、合理的な経済人は完全な情報に基づいて正しい選択をした行動をとるということになっている。説明上の仮定としては必要なのかもしれないが、非現実的であることこの上ない。
実際の社会は情報が完全ではなく、特にプリンシパルとエージェントの関係においては持っている情報量が圧倒的に異なる非対称の状態が当たり前である。
本書は、仮想の話としてコーヒーチェーン店を開業して全国展開していく仮定をおきながら、いろいろな経済取引を想定して情報のはたす機能を理解させようとする内容で、数式の使用も最低限に抑えられておりできる限りグラフで説明しようという姿勢で書かれているため、読みやすい部類に入るだろう。
監査は、経営者の作成する決算情報に対して信頼性を付与する業務だが、そこには投資家と経営者との間の情報の非対称性が想定されている。非対称性を埋める機能は開示の役割だがそれは企業の内容についてであって、開示情報の信頼度(つまり経営者の信頼性)についても非対称の一つであるため、それを埋めるのは監査人による監査の機能である。
非対称情報という考え方を理解し整理するためには必須の知識が詰め込まれているので、監査人にはおすすめしたい。

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