A級戦犯は何を語ったか

東京裁判尋問調書より(NHKスペシャル)を視た。(昨夜)

開戦に至るまでの過程での、東條と広田の尋問を通して、昭和天皇の責任、
南京事件の軍部と政府との関係を中心にストーリー展開した番組で、最後は東條と広田の絞首刑判決で終わる。

大きな流れはこうである。

軍務大臣現役武官制や統帥権干犯問題などに現れているように、帝国憲法は「統帥権の独立」が金科玉条として軍部によって解されていた。
したがって内閣は軍に対する口出しができない構造になっていた。とはいえ、
外務大臣であった広田などは内閣に対して状況を訴えかける責任があった。

一方、統帥権が独立していたのであれば、その最高統帥者であった昭和天皇に軍の運営に関する責任があったことは間違いない。
しかし東條・広田の尋問からは「陛下は開戦に反対しておられた」との供述しか得られない。最後は、戦後の混乱を収拾するために天皇を「利用」
しようとしたマッカーサーの考えで極東軍事裁判への天皇の責任の立件はとりやめられた。しかし、
日本の戦争責任を独自の立場から主張する台湾国民政府によって南京事件が特に取り上げられ、何ら対処しなかった広田らに責任があるとされた。

シリーズになっているらしく、今日のNHKスペシャルは、「パール判事は何を問いかけたのか」だ。パール判事は「パル判決書」
が講談社学術文庫で出されているが、「被告人全員無罪」を主張した判事である。

「昭和の精神史」(竹山道雄=東京裁判傍聴)を読んで以来、東京裁判の問題は自分の頭の片隅にいつも残っている。
それは自分の職業とはまったく関係ない話ではある。

しかし、事実を事実として認識することの難しさと、事実の解釈(意味づけ)
に当たっては常にそのときの政治判断が介入するという問題から逃れられないという現実は、大きな意味での共通項である。そんなわけで、
東京裁判とパール判事は、自分の思考に相当なる影響を与えているのかもしれないなと、最近思っている。

This entry was posted in Uncategorized and tagged . Bookmark the permalink.

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

CAPTCHA


計算式を埋めてください * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.